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ロングインタビューもいよいよ後編、2016年11月26日についに開幕した『日本eスポーツリーグ』。日本eスポーツリーグ立ち上げの裏話や、筧さんの想い描く「日本eスポーツシーン」がどう現実のものとなっていくのか、そのロードマップが詳しく語られています。eスポーツとは

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‐日本全国津々浦々でeスポーツを楽しむ‐日本eスポーツリーグいよいよ始動。eスポーツが生み出す地方創生の大きな可能性

日本eスポーツリーグ – JAPAN e-SPORTS LEAGUE

――いよいよ日本eスポーツリーグが始まりますが、準備段階での地域の感触はどうだったんですか?

地域活性に本気で力を入れているところは、何かやっぱり起爆剤となるものを探していて、eスポーツはやっぱりそれに向いてたりするんですよ。

8月頃に、ある方の紹介で北九州にお伺いしたんですが、そこに北九州の市議会議員の方や、北九州市役所の方々が待ってくださっていて。

そこで、日本のeスポーツの現状や、これからいよいよ日本eスポーツリーグが始まるんですっていうお話をしたら、ちょうど11月5日に日本eスポーツリーグの開幕戦をやる時に、北九州でアニメ、ポップカルチャー・フェスティバルを開催されるってことで、そこでパブリック・ビューイングやりましょうって言ってくださって。

で、僕が「ああ、ありがたいです。でもうち、予算ないですよ」って言ったら、「うちも予算ないけど頑張ります」って(笑)。

――助け合い型プロモーションですね。手弁当で仲間たちが行って、実況して、eスポーツMaXでそれを放映・応援するという。

そうですそうです。お互いに応援する、みたいなね。そういう感じがいいかなと。

――地域の企業が応援するというと、鉄拳のノビさんユウさんのような、地域企業がスポンサードして、プロプレーヤーが誕生したという事例もありますよね。

そうですね。地方は徐々にそういうのが出てきてくれればいいなと思っています。

今ちょうどJeSPA(一般社団法人 日本eスポーツ協会)がカリキュラムなどを作ってる北海道ハイテクノロジー専門学校さんもそうですけど、来年からeスポーツ科が始まるので、うちから人を送り込んで授業をやって。だから授業のシラバスとかも全部こちらで監修したり実際に作ってもいるんですよ。 Eスポーツプロフェッショナルゲーマー専攻

――北海道、福岡という東京から一番遠いところから熱が始まっているんですね。日本eスポーツリーグの発足で日本国内でプロと認定されるひとつの「出口」ができるわけですが、まだまだプロゲームがお金を生む市場は海外にあるといえます。しかし筧さんは、そのeスポーツ市場を日本国内で成立させようとしているということですね? 

そうです。結局、Jリーグを作ろうとしてるわけですよ。だから世界に出てってくれる人もその中にはいるんだけど、まずは国内で食える人を増やさないといけないなと。だからそれを地方を巻き込んで日本全国に作っていかなきゃいけない。

例えばある地域の専門学校でeスポーツを学んだ人がその地域のチームに入って、プレーヤーとして活躍する、もしくはスタッフとして活躍する。また、eスポーツの施設があってそこに就職する、そこでコミュニティイベントを開催する。

例えば、北海道がまさにそのモデルになろうとしていますが、北海道ハイテクノロジー専門学校がナチュラルズ北海道のチームをスポンサードして、それで卒業生はスタッフとかプレーヤーでチームに送り込む。今度北海道にeスポーツの施設もできるから、そこに就職もする。それからイオンエンターテイメント(イオンシネマ)が北海道にあるスクリーンをパブリック・ビューイングで使う。そしたらそこに生徒も就職する、みたいな形で、要するにある程度回る。

Naturals

それをやってくと、今度は北海道の量販店にeスポーツコーナーができて、そこのセールスをやる人も必要になるから、そこにも就職する。そうすると今度は北海道のテレビ番組がeスポーツの番組を作ろうということになったら、そこの学生さんたちもそのeスポーツ番組のディレクターとかになって、こういうところに就職する、ADになって就職する、みたいな。

要するにいろいろ地域でそういうのが回るようになっていけばいいんだろうな、というふうに思うんです。

――なるほど、eスポーツによって地方に産業や雇用が生まれるのは、これからの日本にとって、大きな地方創生の可能性といえると思われます。また、今回プロサッカーチームの「東京ヴェルディ」も参画されましたが。

やっぱり『東京ヴェルディ』っていった瞬間に、信用度が変わるところがありますね。

Verdy

あれはもう羽生社長の英断ですよね。これ、普通にガチでスポーツだけやってきた人だと、多分乗ってくれなかったと思います。羽生社長だからこそ乗ってくれたっていう感じがありますね。

――ゲームに理解がある方ということですか?

いや、ゲームに理解があるということより、多分面白いとか、(流行が)来そうだなっていうところに対する感性が鋭い人って感じだと思います。それ、面白いな、と。じゃあまさにうちがやろう、と言ってくださったんで、じゃあ、っていうことでお願いしました。

ちょうど欧米でスポーツチームがeスポーツチームを持つっていうのが当たり前になってきて、そのニュースを「ふーん」って聞く人と、「えっ?」て見る人と、やっぱりその差はあると思います。

今回リーグの立ち上げにヴェルディさんが参画してくれたことによって、今後他のサッカーチームでもやりたいというところが出てきていただけるといいなと思っています。

――スポーツというと、対戦相手の分析や戦略、技術の向上が不可欠ですが、日本eスポーツリーグでもそういうメソッドや分析ツールなどはあるのですか?

そうですね。やっぱりこれから求められるのは、そういう科学的な分析が必要だろうなということで、実はそれ、着手はしてるんですけど。もう少ししたら形になっていくと思います。

――プロゲーマーと聞くと、成人している印象を受けますが、日本eスポーツリーグでの募集年齢はどれくらいでしょうか?

今は18歳ぐらいの人が中心になって入ってきてくれればいいなと思ってます。要するに学生です。僕はプロっていうよりは今は実業団チームだと思ってるんですよ、まだ。だから僕は、うちの日本eスポーツリーグあたりじゃ、まだプロゲーマーとは言えない、実業団ぐらいかなと思ってます。18~19歳ぐらいから入ってもらって、いろんな作法を学んで、プレーヤーとして輝いていってくれればいいと思ってるんで。

そこはもう、まさにスポーツ選手と一緒ですよ。Jリーグだって平均引退年齢25〜26歳なので。サッカーは特に短いといわれていますが、でもほぼ全てのスポーツ、そうですよ。中には30歳で引退の人もいるけれども、19とか20歳で引退決めなきゃいけない人もいるわけで。

eスポーツでも24~25歳で身体能力のピークは越えるんですよ、平均ね。あとは技術や経験値が選手の能力を支える部分が大きい。


日本でeスポーツがJリーグモデルを成立させるために[]

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――日本のeスポーツがJリーグモデルを成立させるためには、ゲームを見て楽しむ観客の存在が非常に重要だと思われますが、そこにゲームのタイトルの関連性はあると思われますか?

そうですね、まずハラハラドキドキしたいとか、応援をすることによって何か発散したい、自分はプレーヤー側にはなれないけどそれを応援することで非日常を感じたいっていう観客の方々がeスポーツを支えてくれるのは間違いないです。

ただ、タイトルは本質的には関係ないです。例えば、アメリカのアメフトのスーパーボウルを見に来てる10何万人の観客のうち、ルールをちゃんと分かってる人は50%パーセントいないんですよ。半分以下です。これはマーケティングデータがあるんです。

要するに昔のローマの格闘場じゃないけれど、でかい男たちがバーンとぶつかって、それをあおるナレーションや実況があって、それでみんなでワーッと騒げて、ホットドッグ買ってコーラ飲んで、ビール飲んでワーッとやってれば楽しいっていう娯楽がある。

そのシーンをちゃんと作れるか、作れないか、なんですよ。

eスポーツも同じです。だって、スノボでXスポーツってみんな盛り上がってるけど、あれ何回転してるかなんて、全員が分かって見てるわけではないでしょう。僕は何度見ても、これが360度なのか720度なのかって分かんないですよ。

だけどなんとなく実況も盛り上げるし、楽しいなと思うんだけど、実際のところ今のがどんな得点だったのかとか、転んでくれりゃ分かるけど、滑り降りた選手のどこがどう違うのかって素人目にはスローで見ても分かんないわけですよ。それは、フィギュアスケートも体操もそう。

だけど何か、応援するマインドがあるじゃないですか。確かに。それを作れればいいと思うんです。そして僕は、その1つは地方性だと思ってるんです。地元の、要するに大阪のチームだから応援したくなるとかね。

――野球でもその文化はありますね。広島カープなんて視聴率70%超というニュースも出ていましたが。
引用元:広島東洋カープ オフィシャルサイト

広島東洋カープ

そうそう。市民球団っていうことでやってるわけじゃないですか。それでみんな、苦しい時に支えあって、みんなで『たる募金』にお金出し合ってっていう物語があるじゃないですか。でも、eスポーツだって同じなんですよ。

僕は東京一極集中にしたくないっていうのは、それなんです。東京だけで盛り上がってても盛り上がらない。

それはやっぱり地方があって、東京があって、地方で自分の身の回りにいるうまい人みたいになりたい、っていう子どもたちがいて、それでやってきて、東京で東京のチームを負かしたと。で、そのうち世界からお声がかかったっていうストーリーができれば、その時に初めてeスポーツの文化が世界に追い付くんです。そういうふうになんなきゃいけないんです。

だからそのために、地方で作るんです。今は東・名・阪・九・北かもしれないけど、徐々にやりたいって人たちがどんどん出てきてるので。

地方の人たちでeスポーツチームを早く作りたいんです、ってお話はたくさんいただいていてるんです。ただ、まあ落ち着いてくださいと(笑)

まずは要するにスポンサーを見つけてください、最低でも2年できるような資金を集める必要がありますと。そこからスタートしなかったら、もう掛け声だけで終わっちゃうから。だからそういうところをちゃんと地方の人たちと話しながら、じゃあ賛成してくださいっていうところまで、どこまで持っていけるかですよ。

でもそれは今、機は熟してると思います。

 

トップランナーインタビュー:eSportsに人生を投げうった、 日本一のeSportsファン 筧誠一郎 記事リンク

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