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鉄拳初のプロプレイヤーとして、山佐株式会社からスポンサードを受けている「ノビ」氏。 後編では、最近注目を浴びている eSports業界の感想や未来像、鉄拳の魅力、鉄拳コミュニティの今後などを語ってもらった。プロゲーマーを目指す人たちへのメッセージも込められているので、ぜひ目を通してほしい。

2016.09.16 Interview by Shudyyoshel

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プレイヤーネーム:ノビ
「神速のアサルト」の異名を持つ、攻めに特化したスタイルで人気を博すプレイヤー。鉄拳の聖地と呼ばれるゲームセンター「namco巣鴨店」での鉄拳インストラクターを経て、現在、山佐株式会社のスポンサードを受けている。WCG2011優勝、EVO2015優勝、公式大会「THE KING OF IRONFIST TOURNAMENT 2015」優勝と3度の世界一に輝く。

プレイヤーとしてだけでなく、鉄拳の講習会や、実況解説などのイベントもこなしている。



 


―― 日本のeSportsの今の流れはどう考えていますか?

今までで一番いい流れなんだと思います。2010-11年のころは、ほぼゲームで仕事をするなんてありえないことだったけど、今プロゲーマーって数多く生まれてきているし。まだ一般人には響いていないかもしれないけど、プロがいるっていうことが知られるようにはなってきている。

今までってゲームで飯を食べるなんて考えられない、頭の固い人が多かったじゃないですか。ゲームって駄目なものって思う人がすごく多かったけど、最近はゲームの認知がすごく変わってきたなっていう印象。僕も「ゲームで世界一になってます」っていうことを堂々と言える環境ができてきたし、それを活かして仕事ができる環境になってきたな、と思います。

最終的に、今後5年10年後とかに、ゲームってものがちゃんと定着するんじゃないかなっていうイメージはありますね。


―― 今年もeSports元年だっていう言われ方もしています。将来的にどういった形になっていると思いますか?

5年後10年後、ポンポン全部のゲームからプロゲーマーを目指すみたいな。韓国って、男の子のなりたい職業ランキングの第2位がプロゲーマーらしいんですよ。日本もここまで行けとは言わないですけれども、最終的にプロゲーマーを目指して、ゲームが悪いものではないっていう考えに行きつくのが、何年後か先になっていけばいいなと思っています。


―― 「遊んでいるだけで害だ」っていう人も親世代にはいますしね。

ツムツムの世界大会とかあるといいんですけどね。ほんわかしてて。そしたら、ディズニーとのコラボで支援してくれるとかいういい流れができるでしょうし。いろいろなゲームが賞金出したりとか、メディアでどんどんプロゲーマーを出していくとかっていうことをすれば、すごい明るい未来になるんじゃないかなと思います。

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―― 格闘ゲームの現状に話を移すと、見る側は多く、やる側が少ない印象で。やる側が多くないとやはり業界は盛り上がらないと感じていて。見てるだけではメーカーが新作を作ってくれないし。「格闘ゲームは敷居が高い」と思われがちな中で、どういう施策をしていけばいいと思いますか?

ずっと前から、初心者層を取り入れる活動しかしてこなかった経験があり、鉄拳に特化して活動しているので、僕の中では、今、僕にさえ声かけてもらえれば、取り持つことだってできます。全国各地で講習会をやるとか、大会をやることによって、ゲームセンターに足を運ぶ機会を作れる可能性ってすごくいっぱいあるので。全国各地・色々なところで、例えば有名プレイヤーがやったりとか、僕がいろんなところに行ったりとかして、もっとそういうゲームセンター自体で、盛り上げてイベントをしていけば、「一回じゃあ見てみよう」ってなるのかな、と。僕もゲームセンターの大会を見て、鉄拳を始めたように。絶対機会が増えるはずなので。まず、やってみないと、という所だと思うんですよね。


―― 仮にライトゲーマー層に向けた、ふらっと鉄拳を覗いてみた時に伝える、鉄拳の魅力をお聞かせ願えればと思います。

爽快感は全てのゲームにおいて、一番だと思います。鉄拳の出す技って、全部人間が出せる技で作られているんですよ。ビームを出したり腕を飛ばしたりするロボットは別にして。ポールの崩拳(ぽんけん)っていう技があるんですけど、こぶしを握って手を前に出してるだけなんですが、ゲーム画面のグラフィックで出すと、メチャクチャ気持ちいいし、カッコいいんですよ。


―― 爽快感の大元にあるものっていうのは何なんでしょうか?

エフェクトやグラフィックですね。技を当てた時に出る、パーンっていうエフェクトって、当てた時の音とすごくあってて気持ちいいんですよ。相手が吹っ飛ぶ瞬間に、「バーン!」って青い光がエフェクトとして出て、相手が吹っ飛んで、っていうのが、実際自分が人を殴っているわけではないんですけど、それをやっているかのような気持ちよさがあるんです。

あとは、1回2回じゃわからないんですけど、ある程度ゲームを知っていくと、このゲームすごいなって思う所が多くあって。女の子のキャラクターが凄くカワイイとか、こんな子を嫁にしたいとか、いっぱいいるんですよ。キャラクターを好きになったりとかっていうのは、鉄拳だけなのかなって思います。ライト層が鉄拳に入っていくには、まず自分の好きなキャラクターを決めてもらいたいし、そこから入っていくのが一番かなと思っています。

結構面白いのが、例えば、キングっていう覆面をかぶったプロレスラーを使用する人たちの中には、本当にプロレスが大好きな人が多くって。福岡にもプロレスラーのキング使いがいて。出す技が全部本物なんですよ。全ての人に向けた、自分の好きなキャラクターが確実にいると思うので。


―― キャラクターに自分を投影したり、理想の姿を確認したりするんでしょうね。

女性プレイヤーは、イケメンなキャラが大好きだったりとか、カワイイお嬢様キャラとかをよく使ってる印象です。すごくごつごつしたキャラクターはあまり使ってるのを見なかったり。キャラを選ぶ人の属性がわかりやすいんですよね。眼鏡をかけてるような、いわゆるオタクっていうような人は、おっぱい大きなキャラを使ってたりとか。

ある外国のプレイヤーが特に面白くって。ガタイの良いメチャメチャ強そうな黒人がシャオユウっていうすごくカワイイキャラを使ってるんですよ。「ギャップやべーぞ」みたいな。日本人は自分の好みで使うかもしれないんですけど、外国人のキャラの個性はすごいですね。こういう点はすごく面白いな、と思います。

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―― 格闘ゲームに限らず、eSportsとかプロゲーマーを目指してるティーンに対して一言お願いします。ノビさん目線で構いません。


プロゲーマーって何なのかっていう定義が、まだ日本の中でははっきりしていないんですけど、基本的には「スポンサーがつく」っていうのがプロゲーマーとしての第一歩だと思います。

プロゲーマーって、「ゲームやってて、お金がもらえる最高の仕事だ」って思う人がほぼ全員だと思うんですけど、すごくつらいことっていっぱいあるんですよ。自分が好きだったゲームのはずが、嫌いに思えてしまうこともあるし、つらいこともいっぱいあって、いろんな経験をしましたが、最終的にこの仕事はやってて幸せだなって思える、そういう職業だったという考えに行きついているので。

やっぱり稼げる稼げないって言ったら、今はまだ明確に稼げるって断言できる感じじゃないんですよ。「絶対に稼げるからみんなやったほうがいいよ」とは言えないんですが、この先って絶対に明るくなるっていうのは間違いなくて。今から目指すなら間違いなくいいんですよ。逆にずっと前から頑張ってきた人にとっては、「あと5年後生まれたらよかった」ってイメージが強くて。もし5年後に2連覇とかしていたら、絶対もっとご飯が食べれてたかもしれない。2年後から5年後って、すごい環境もよくなっているし、僕はすべてを捨てる覚悟で鉄拳をやっていたんですけど、5年後は別に捨てなくても、プロゲーマーになる可能性って相当高くなってるはずなんですよ。現に今も、ゲーム一本じゃなくて、両立しながらのプロゲーマーってどんどん出てきていますし。

敷居が高い職業だって今は思われてるかもしれませんが、目指すんだったら今からじゃないと、5年後になった時は損をするなって意識がすごい僕の中ではあるので。今から、本当にゲームが好きで、ゲームで食べられたらいいなぁって、ちょっと浅はかな気持ちを持っている人がいましたら、本当に一回思い切ってやってみるべきだなって思います。

何年後か先を見据えて、オリンピック選手も今から4年後を目指して練習するってあるじゃないですか。鉄拳もゲーマーも一緒なんですよ。何年後か先を目指して考えなきゃ絶対だめだなって思ってるんで。今から目指してやってほしいと思いますね。

ただ、鉄拳に関しては、まだまだ土台作りといった感じではあります。ストリートファイターに関しては、今かなり土台が作られてる状況で、後進の育成もすごくできてますし、格闘ゲームという枠の中では特化できてるゲームなんですよ。鉄拳とか、他の格闘ゲームに関しては、まだ地盤ができてないので。

有名なプレイヤーが絶対に地盤を作っていくと思うんです。配信をやったりとか、もっともっと世間に知られるような活動を行っていくんで、将来は夢のある仕事っていうのを見せられるように頑張りたいな、という気持ちです。


―― 今、仮にプロゲーマーになりたい、という人がいたら、具体的に何をすればいいと思いますか?

プロゲーマーになりたいんだったら、まず目標を立てないといけないと思うんです。僕の目標は、プロゲーマーになるじゃなくて、まずは世界一だったんで。まずじゃあ、このキャラクターで何か月以内にここまで行こう、とか。今日はこのコンボができるようになって、次は試合中に実戦してみようとか。目標を立てながらやるだけで、成長速度ってすごい変わるんですよ。

僕も兄に鉄拳を教えてるんですけど、普通の人がやったら1年くらいで中級者に入るか入らないか、段位に換算すると10個くらい伸びるんですけど、3~4か月くらいで、13個くらい段位が上がってるんです。教え方だったり、意識の持たせ方だったり、「今使ってるキャラクターはこれが特徴だから、あとは自分で考えろ」みたいなことを言って、何か目標を持たせながら鉄拳をプレイさせるだけで、全然成長が違います。

目標ってだけじゃ、すごく大ざっぱなので、「まず1つ1つ考えるのが凄い大事なんだよ」ってのを教えないとダメなんです。「今の試合はなぜ負けたのか」「この大会に向けて、何をしようか」とか。目標を毎日毎日必ず作る。僕がゲームセンター行った時は、まずこのキャラクターを使おう、今このキャラ使って、このくらい勝ててたらこのキャラやめて、次のキャラ行こう。とか。自分の中で簡単な目標があるんで。そのおかげで鉄拳がやれてるので。


―― 大きな目標と小さな目標の2つを作っていく、ということですね。

「夢に向かう」っていうふんわりとしたものでなくて、「自分の中で絶対ここまで行く」ってラインを作ってないと100%ダメで。まずは手っ取り早く、プロゲーマーになるんだったら、そのゲームで強くないといけないじゃないですか。目標に向かってどうするかっていうよりも、「強くなるための目標」を考えていくだけ。自分の設計図を作っていく。

仕事の設計図に関しては、ユウ さんに任せてるので、仕事の設計図は0点なんですけど、ゲームに関する設計図はすごいできてると思うので。この点が地力の差に直結するんじゃないかなって思います。

目標を持つってありきたりな答えかもしれないですけど、じゃあ逆に何をもって鉄拳をやるのかって感じなんですよ。ただ単に負けず嫌いだから鉄拳をやるっていうのじゃなくて。 僕も負けず嫌いですけど、目標があって達成したときって、自分の成長が感じ取れるんですよ。「あ、俺今強くなった」って。今まで勝てなかったやつに勝てるように頑張って勝った時って、間違いなく強くなってる。要はスキルアップしてるわけじゃないですか。それを少しずつ、1つ1つ行っていたら世界一になっていた、ってだけなので。

(1)10年以上もの間、フェン使いの実力者として、名を連ね続けているプレイヤー。 ノビと同様、山佐株式会社よりスポンサードを受けている。 EVO2005 準優勝・EVO2015 7位タイ・EVO2016、9位タイ。


―― 根っこはほとんどオリンピック選手と一緒なんでしょうね。

なんでゲームやっちゃったんですかね(笑)


―― 今の鉄拳プレイヤーに対しても一言いただけますか? 土台を作っていかなければならないという中で。

もう少しやましい気持ちを持って鉄拳をやってほしいかなっていう思いがあります。俺が世界で一番強いのを証明するために鉄拳やってるって人がいなくて、そういうことを逆に周りから「こいつ寒っ!」って思われちゃう。純粋に強さをどん欲に求めるプレイヤーがいないのがさみしくて。自分は思ってても恥ずかしかったから言わなかったんですけど、内にはずっとその思いを秘めていたので。例えば普通に対戦して負けちゃったら、「いい試合でした、ありがとうございました」って、俺は絶対に言わないんですよ。「こいつは次絶対倒す」って思いしかないんで。それくらいやましい気持ちをもって、鉄拳をやってほしいと思います。

例えば段位戦で「絶対お前には負けないから」っていう何か、痛いレベルで強い気持ちがある人がもっと増えてほしいんです。誰にどんな目で見られようとも、それを貫く人は絶対に強くなると思う。そういう人が増えてほしいなと思います。


―― 逆にどのようにモチベーションを保てばよいですかね? 過去にノビが強すぎるからと、プレイヤーが諦めてる風潮がありましたが。

俺が上に君臨していたなら、簡単な話、俺を倒せたとしたら、その人の名前は出てくるわけで。そういう面でも目標になっていられるんです。そのくらいの強さにはいなければいけないなとも思うし。だから「俺を目指す」っていうよりも、簡単な話、「俺を倒して、名前を挙げる」くらいのやましい気持ちになってほしいな、と思います。

僕自身のユウさんとの出会いも実はそんな感じで。僕がまだまだ駆け出しのころに、ユウさんが超有名プレイヤーで、「NO RESPECT」っていうチームだったんですよ。鉄拳界ではルイヴィトンばりのブランド力の高いチームで、ノーリスペクト様くらいのイメージで、女性のファンもいて。僕は本当に大嫌いだったんですよ。「調子乗ってるなーこいつら」って。こいつらマジ許さないからって最初思ってたんですが、今はNO RESPECTのメンバーとはすごく仲がいいし、ユウさんに至っては仕事のパートナーにもなってるので。そういう反骨精神を持ってたから、成長していったと思います。

だから、俺がこういう仕事を受けて、インタビューが載ることによって、「こいつばっかインタビューしててつまらねーよ」って思ってくれていいんですよ。「俺が出て喋ったほうが面白いじゃん」って思ってくれたら、次につながってくれるんで。叩かれたり、嫌に思われるのも、プロゲーマーの仕事と思っています。


―― 編集後記

筆者自身、ノビ氏とはnamco巣鴨店のインストラクター時代からの長い付き合いであるが、彼のプレイヤーとしての過去、心境の変化などを細かく聞いた経験はなく、今回は趣深い話が聞けたように思う。実際のところ、「鉄拳の顔」として立てるならノビ氏だと、同じ鉄拳プレイヤーとして思っているので、これからの活躍にも大いに期待したいし、後進が続いてくれることも願うばかりである。

9月17日には、ノビ氏が所属する山佐株式会社主催の鉄拳7FR大会「KELOTCUP 2」が、アミパラ岡山店で開催され、配信も行われる。実況解説をしながら対戦も行うという、彼のマルチプレイヤーとしての姿にぜひ注目してほしい。

http://mastercupofficial.com/15196


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